セルロースファイバーの欠点は?本当に快適か?実際に採用した感想
新築の戸建にセルロースファイバーを採用したので、実際の快適性についてレポートしたいと思います。
我が家の場合、断熱効果の高い外壁材を使用しているわけではないので、セルロースファイバーの性能を検証しやすいかと思います。
セルロースファイバーの厚み105mm(密度55kg/m3)、主要採光面は南西、外壁材はサイディング仕上げ、部屋の高さは2.6メートルです。
それでは体験レポートです。
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セルロースファイバーとは
まずはセルロースファイバーとは何なのかを簡単にご説明します。
セルロースファイバーは新聞紙の古紙を利用した断熱材で、吹き付けウレタンと同等の熱伝導率を持ちながらも調湿効果や防虫効果、防音効果、防火というプラスαのある断熱材です。
熱伝導率だけで言えば高性能グラスウールよりも実は劣りますが、気密性が高く隙間なく施工できるため結果的に高性能グラスウールよりも高い断熱性を得ることができる断熱材です。
現時点ではキングオブ断熱材の呼び声高い断熱材ですが、実際の効果はどうなのでしょうか。
セルロースファイバーの夏の断熱効果
冬に比べ断熱効果が分かりづらい夏ですが、エアコンの効きは非常に良いです。
エアコンの設定温度を29度にしておけば十分過ぎるくらい涼しいです。
また、涼しくなり始める時間もとても早く感じます。
5分もすれば快適になっています。
また、朝に一階のリビングに行くと涼しさが残ってるのにはビックリしました。
直射日光を入れない事や、部屋の中て熱を作らなければ長時間涼しさがキープされるようです。
日中窓を閉めきって家に帰ってきても、不快な程の暑さはありません。
ちなみに、夏の電気代は3,500円~4,000円ととんでもなく安かったです。
次に熱以外の室内環境要素である湿度について確認していきます。
夏のセルロースファイバーの調湿効果
夏の晴れた日であれば室内の湿度がおおよそ平均で68%前後。
夏の快適な湿度が50%~65%と言われているので、なんとか許容範囲か少し気になり始める湿度といったところでしょうか。
ただ、さすがに雨が降ると快適とは言い難い数字かもしれません。
小雨で70%以上、しっかりと降った日で75~80%程度の湿度でした。
まあ、名古屋で断熱・調湿を気にしていない家だと晴れた日でも70%~80%がざらなので優秀な結果になったのではないでしょうか。
断熱材であるセルロースファイバーに室内調湿効果を求めすぎるのはよくないかもしれません。
補助的役割として考えるのが良いかと思います。
調湿効果を求めるなら機能性壁紙や漆喰、エコカラットと併せて使うことが良さそうです。
室内調湿効果よりも壁内の結露対策としてのメリットの方が大きく感じます。
将来的に見れば、構造内で良い環境をキープしやすいので構造材が悪くなりにくいと考えられます。
スポンサードリンクセルロースファイバーは寒い?冬の断熱効果
日陰から来る涼しい風を流しておけばそれなりに涼しい夏とは違い、冬は暖房器具は少なくとも必須です。
よく無暖房で暮らせるなどのふれこみを目にしますが、セルロースファイバーには保温効果があるだけで、発熱効果があるわけではありません。
換気をすればしっかりと冷え込みます。
(もしかすると第1種全熱交換型であれば冷え込みは抑えられるかもしれません。)
ただ、エアコン暖房を最初の1時間でそのあとはパネルヒーターなどの弱暖房でもしっかりと暖かさをキープしてくれます。
パネルヒーターは部屋をしっかり暖めてくれる暖房器具ではありませんが、20℃程度を安定して部屋の温度をキープしてくれるのはセルロースファイバーのおかげではと感じます。
また、全ての暖房器具を消したあとでも2時間ほどしても18℃をキープしてくれている為、やはり保温性能は間違いないものかと思われます。
ただ、もう一度言いますが、セルロースファイバーでも暖房無しの生活はほぼ無理です。
一度温めた空気を保温してくれるだけの断熱性能はあります。
しかしながら、外からの冷え込みを抑える効果は間違いなくあると感じます。
グラスウールで建てたお宅に伺った際に身体の芯から冷えるような感覚を覚えるほど寒かったのですが、家に帰ると、グラスウールで建てられたお宅ほどの冷え込みは全く感じませんでした。
その日の外気温が約4℃で、グラスウールの家(無暖房)で8℃になっていました。
セルロースファイバーで建てた我が家(無暖房)が13℃でしたので、冷え込みの違いはあきらかでした。
ちなみに、エアコンをつけるときは設定温度が18度でも十分暖かいので、電気代的にはかなりありがたいですね。
冬場の電気代は一番寒い1月で7,000円~8,000円程度で収まっていますので、平均的な戸建ての電気代と比べればかなり安い方かと思います。
冬のセルロースファイバーの調湿効果
冬はどうしても乾燥しがちでセルロースファイバーにも多少なり調湿効果を期待していましたが、これ残念ながらそこまでの効果はありませんでした。
さすがに30%を下回ることはありませんでしたが、エアコンをかけない時で平均35%で40%にいくことはほぼありません。
調湿効果のあるセルロースファイバーとはいえ、冬の乾燥を防ごうと思うと加湿器が必須という感じです。
ちなみに湿度40%を下回るとウイルスが繁殖しやすくなり風邪をひきやすくなるので、加湿器は使ったほうが良いでしょう。
セルロースファイバーの防音効果
防音効果については、一般的なRC構造のマンションよりも良く感じます。
正確にいえば防音効果ではなく吸音効果によるものですが、
密度が高く、やわらかい素材のセルロースファイバーは吸音として役割をしっかりと果たしてくれているようです。
窓の性能も関係してしまいますが、窓を閉めきった状態であれば、よほど神経質でなければ外の音は気になりません。
家の近くをバスが走りますが、それほど気になったことはありません。
当たり前ですが、窓を開けていればしっかりと外の音は聞こえます。
ただ、窓を閉め切っている状態ですと、雨が降ってきても全く気付かず、洗濯物が濡れてしまっているというアクシデントに遭遇するほど、防音効果は抜群です。
セルロースファイバーの防虫効果
セルロースファイバーにはホウ酸が含まれいます。このホウ酸とはゴキブリようのホウ酸団子の成分と同じで、セルロースファイバーにもこれと同様のゴキブリ予防の効果が期待できます。
また、家の大敵白アリも実はゴキブリの一種なので、ホウ酸ももちろん白アリ予防に効果があります。
含有量が少ないので、セルロースファイバーを入れておけば絶対に安心というものではありませんが、虫嫌いな方にはとてもオススメの断熱材です。
我が家はまだ築年数が浅いので、はっきりしたことは申し上げにくいですが、家の中で虫が出たことは今のところありません。
高い防火性能
先ほどご紹介したセルロースファイバーに含まれるホウ酸によって高い防燃処理になっており、準不燃材料にも認定されています。
また、他の化学物質の断熱材とは違い有害な煙が出にくいため、避難時に有害物質を吸い込にくいというのもメリットと言えます。
スポンサードリンクセルロースファイバーの欠点・デメリット
欠点は、とにかく価格が高いということ。
断熱材の中ではかなり高額な部類です。
要因としては、材料自体が高い事と、施工が大変で人件費がかかってしまう事が大きいです。
袋入りグラスウールの場合、タッカーだけで止めるだけなので、簡単で工期も短くても済みます。
しかし、セルロースファイバーでは専門職の人が施工を行うため、その分の人件費も高くなってしまいます。
他には、将来的に沈殿してくる可能性があります。
密度が低いとその分沈殿していき、将来的に断熱効果が悪くなっていく可能性があります。
しかしながら施工したもの見てみましたが「パンパンに詰まっているけど本当に沈殿するのか」という印象です。
エアコンの施工で壁に穴を開けた際も、穴の上からボロボロと崩れ落ちてくるのかと想像していましたが、
ほとんど崩れることなく固まっているような感じで、あれだけ詰まっていれば将来的な沈殿も少ないように感じます。
目には見えないところで言えば、セルロースファイバー自体の重みです。
断熱材の中では圧倒的に思い部類に入ります。
一般的にな大きさの戸建てに使うと1トン以上にもなる重さですので、基礎にもそれなりの負荷がかかる重さになります。
ですので、断熱材自体の加重も家の設計時に考えておきたい項目になります。
セルロースファイバーの価格
我が家の場合、床面積110平米の2階建ての家で床・天井も施工して約80万円でした。
この価格を高いと見るか安いと見るかは価値観によりますが、
私個人としては価格は正直高いと感じながらも満足のいく生活を送れているため、家族が家で快適に過ごしていく為の投資だと考えれば納得がいくものと考えています。
また、海外では施工も容易なタイプが出てきていますので、いずれは日本でも価格が少しずつ落ち着いてくるかもしれません。
セルロースファイバーで後悔したことは?
セルロースファイバー自体の性能に文句はほとんどありません。
ただ、前述したように価格がとにかく高い事、やはりここがネックになると思います。
実際施工してみて値段から考えるとセルロースファイバー約80万円ではなく、現場発泡 硬質ウレタンフォーム約40万円+窓の断熱性アップに約40万円の計80万円でも良かったかもしれないと感じることはあります。
断熱性能だけであればそちらの方が効果はあると思います。
ただ、防音性や防虫、調湿効果、躯体環境まで考えるならセルロースファイバーにはその価値があると思います。
私の場合、プラス40万円で躯体環境を良くできていると考えれば、それほどの後悔はありません。
セルロースファイバーの効果まとめ
決して安い断熱材ではないので、絶対的なおススメはできませんが、快適性を求めるなら間違いなくアリな断熱材です。
断熱性能以外にも防音性、調湿効果、防虫効果など、これほどまでに付加価値のある断熱材も珍しいです。
私個人の意見で言えば、セルロースファイバーは満足のいく断熱材と断言できます。
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ディスカッション
コメント一覧
私の家もセルロースファイバー施工したのですが、同じく湿度は35パーセントがせいぜいですね。タイベックスマートなどの調湿シートも室内側に施工すべきだったかなと思います。
ゆうさん
コメントありがとうございます。
セルロースファイバーは他の断熱材と比べれば調湿効果はあるようですが、あくまで補助的なイメージですね。
私もタイベックスマートでどれほどの差が出るのか検証してみたいところです。
我が家もセルローズファイバーで施工した家で北陸の地に住んで16年になりますが、変わらぬ調湿効果は凄いと感じております。
工事中の写真を見ると透明なフィルムが施工してありますね。
これが調湿効果を妨げているのではと思います。
フィルムは不織布なので通気性はあるかと思いますが、吹き付けタイプ(湿式工法)のセルローズファイバーであれば効果が違っていたかもしれないですね。
吹き付けタイプであればリフォーム時の施工も容易になるので、選定時の反省点です。
それにしても16年の実績をお聞きすると、この先も安心できる断熱材と確信できます。
実際に沈殿した現場を見ました。
メーカー指定の施工会社で正規に研修を受けた職人さんの施工でした。
この断熱材が駄目とは言いませんが問題はコストです。
日本人は30年経つと住み替えます。
賃貸を転々とする人も増えている現在、ここまでコストを掛けて家を建ててくれる人が増えてくれるか疑問です。
私も業界人ですが、外断熱の受注は皆無となり、安価なグラスウールの低コスト住宅ばかりが売れてます。夫婦共稼ぎだと住宅の快適性を気にする人が少ないかも知れませんね。
らんさん
コメントありがとうございます。
セルロースファイバーにしてもグラスウールにしても施工次第で断熱性能が変わってくるので一番大事なところですね。
グラスウールの場合、実は一番施工が難しいので結果的に性能が低い家が出来上がってしまう・・・。
安くて、施工が容易で、断熱性能が高く、内部結露しにくい断熱材が出てくれば日本の家はもっと良くなるのでしょうけどね。
室内の調湿をセルロースファイバーが行うかどうかについての記事だと思うのですが、
前提として室内側に防湿層は設けてないという理解でよいのでしょうか?
セルロースファイバーの欠点は夏場の日本の高温多湿の環境では、
結露をしないギリギリの状態まで湿度を吸い込みすぎることだと思います。
吸湿によって断熱性能も落ちますしね。
タイベックスマート(ザバーン)のような可変透湿シートを用いた場合でも
室内側に外気の湿度を呼び込むことになるので自分は採用しませんね。
結露はしないが快適性もそこなわれる断熱材という風に理解してます。
aaaさん
コメントありがとうございます。
そうですね、ドイツの断熱材の実験でもグラスウール同様吸湿すると断熱性能は下がるという結果が出てますね。
逆に調湿効果はほとんどされていないという実験結果も出ているので、私の家で感じられた調湿効果とも合点がいき、調湿による断熱効果減少は断熱マニアでない限り気にしなくても良いかもしれません。
断熱設計は家の構造・形や風土など全てを考慮しなければその家にとって最高の断熱材は採択することはできないので、今回のレポートは「愛知県で厚み105mm(密度55kg/m3)、主要採光面は南西、外壁材はサイディング仕上げ」という一般的な家でどのような効果があるかを知ってもらえたら幸いです。